T井R子について 4

T井の親切に見えた偽善は、当時の私に見抜けるはずはなく、ただ、「結果こそ出なかったけど自分のためにしてくれた」と映った。まやかされていたからとはいっても、よしみを覚えぬはずはなかった。
しかしながら、当時のT井の本意は、私が左翼を去らないための偽善であり、姦計(奸計)だったのだ。
私が、理由はどうあれ離郷したら、そのまま民青も共産党も去ってしまう___くらいにしか、思っていなかったのだ。もっといえば、私を信用していなかった。それを防ぐために、できもしないことを言い、気を持たせ、偽善を働いたのだ。たとえ、できても何もしなかった、私の利益につながることを。
これだけでも、立派なうそつきだが、後述するけどもっと特徴的なことがあった。
民青の人間が抱える汚い人間性は、例えば、呼び出し時に、地区委員長だったHが、「T井さんが話があるって」と電話で言っておきながら、実は大規模集会<当時だと消費税反対集会>への参加員数に駆り出しただけ、つまり気を惹く用件で誘き出しながら、用件とは別目的で人を利用する_____
こんなことが、何度もあった。かような連中と後年袂をわかったのは、必然ではあった。あまりに汚いから、人が離れていく。ろくに人を選ばない私さえ、遅きに失したものの、離れた。
T井に話を戻そう。
彼女は、地区内で、ミニコミみたいな広報紙をこさえていた。その中で、Hにだまされて「参加」した<つまり用件を伏せた呼び出しに応じた結果>、築城基地での人間の鎖、にて私が、(基地に)腹が立つ、と言ったそうな。言ってもないことをでっち上げていたのだ。
こんな人間を信用したほうが愚かなのだが、「さもやさしげ」な言い草は、他人をまやかすにはこの上ない武器となる。恐らく、へたな毒ガスよりよほど効く。
しかしながら哀しいのは、それらのことに目をつぶってしまうほど、T井をよく思ってしまっていたことだ。

kimitoki