T井R子について 3

その年の進学をほとんどあきらめていた私だったが、T井の偽善ゆえに、一縷の望みを抱いた。
仏心、いや甘さがもたらした副産物は、http://www.syuhouen.com/:彼女の勤め先の電話番号、だった。いまと違ってケータイが超大金持ちの所有物だった頃の話だったので、有り体に考えると、「一気に親しくなった」ことを意味した、といえようか。もっとも、このヒポクリットは、そんなかわいらしい人間ではない、たぬきだった。多分タヌキの中でも、極悪の部類だろう。
彼女に、日を置かず、その教えられた電話番号に、入学費用云々でかけまくったのはいうまでもない。しかし、彼女の台詞は大体一様だった。
「連絡を待ってるから、もうちょっと待って」
何度も同じ答えを聞き続けるうち、納付期限は迫り、日にちはなくなるだけ。
その「回答」は、納付期限の日になっても、同じだった。私大で納付ができない、ということは、進学断念=合格取り消し、を意味した。
結局、合格は取り消し、T井が気もたせをほざいた分、悔しさ倍増だった。
でも、当時の愚かかつ悪しき意味で若かった私は、偽善が<仲間ゆえの>親切に見えたのだ。そしてこのことは、取り返しのつかない結果を招くこととなった。
何より、当時の私の生きる望みだった夢が、可能性が、現実との苦闘を余儀なくされ、KAGEROU以上に霞み行く元凶になった。
kimitoki