影響

この小説は、左翼ネタにしては、主人公が<著者もだけど>さまざまなものに影響を受けている。
それは、大別して、心無い通りすがりと、糧にすらなった本。
もっといえば、組織外のことに対して、盲目ではない。
組織内しか見えないようにした方が、読み手を引きずり込みやすいはずだが・・・

しかしこれで、
「あんた何が言いたいの」にならないところが、書き手の天性か。
また、タイトルは、読み進むうちに溶けていき、読み終わる頃になって、思い出す____仕掛け。
その時、何を思うかは、読み手の自由。
ただし、これは、読み手によっては、激しい拒絶反応を起こす。
理由?一体感が、この小説の根っこにあるから。
あくまで書き物を突き放したい読み手には、きっとこのたぐいの小説くらい、いやなものはない。
逆に、素直に「世界」に入り込む読み手は、正か負かは別として、なにかしらの「感情」
_感動、なんて、そこまでヨイショしたくないわ_
を抱くことだろう。


新井流時に大きく影響した、太宰治から抜け出していることは、評価できよう。
_これができれば書き手としては一人前か_
太宰治以上に、彼に大きな影響を与えたお人は、申すまでもないので、拙稿では書かない。
また、浮き彫りを使っていることも、この小説の特徴。
そんな代物でも、ネタがネタだから、協力出版社でさえ、拒絶した・・・
muramasa