人心までは思いどおりにいかない

ヒトラーないしナチスの敗因は、そこにあるだろう。
別段八方美人になれ、とはいわないけど、どんな思想にも賛成の者もいれば反対の者もいる。


一応ナチスは、「選挙」で勝利し、政権をとった。
ただしそのプロセスは、暴力と謀略にものをいわせたものだった。
たとえば、共産党の仕業とでっち上げた「国会議事堂放火事件」、それを口実に最大のライバルだった共産党を非合法化。
そして選挙で勝つたびに、自党の権限を強化。
また、極右と極左が一緒だったへんてこりんな政党だったナチス自身は、「左派」と呼ばれた極左勢力を切った。<レーム事件>


政権掌握後の各種悪事は、ここで書くまでもない。
ただ、これだけは決定的にだめだ、と言えるのは、ナチズム以外の思想を認めなかったことだ。
違う意見を抹殺にかかったことだ。
それでも、国家運営がうまくいっていた時は、礼賛される。
しかし、うまくいかなくなると、反対者はもとより、手のひら返した裏切り者も多々出てくる。
敵だらけになるのも当然のことではある。


もしヒトラーが反対者の想定をちゃんとして、いたずらに抹殺にかかるのでなく、あめとむちでうまく制御すれば、もしかしたら自国はもとより、ヨーロッパの大半を、何十年か支配できたかもしれない。
いかんせん、ナチスは、ものすごい科学力を持っていた。それは、半世紀後のカルトであるオウムが20年前、猿真似したほどだ。サリンVXガス・・・
今日では当たり前のカラーフィルム、大衆車<いわゆるカブト虫>、安価なラジオの量産、など等も、ナチスがはじめたことだった。
おまけで、ユダヤ人差別を是としたニュルンベルグ法は、アパルトヘイトのさきがけだった。
当時は、世界随一だったはずの科学力を有していた。
それでも、正しい人心掌握ができなかったから、「第三帝国」は崩壊したように思える、かようなことを口にするのは、ぼくだけだろうか?
muramasa